新着情報

2017年11月15日

芸術文化美術コース 第11回講座 「日本刀の美ー自然(サイエンス)が作る美―」 日本刀の美しさをミクロの世界から探る

近年の刀剣ブームで再注目されている日本刀。ここ島根には、たたら製鉄の歴史があり近世たたらの遺構も多く残っています。
今回の講座では、なぜ日本刀が美しいと感じるのか、日本刀だけに現れる刃文の秘密などについて、島根大学大学院総合理工学研究科の大庭卓也教授にお話しをうかがいました。

日本刀は玉鋼で作られ、玉鋼は砂鉄を釜土で作った鈩(たたら)の中に入れ、木炭で熱して精製されます。中国山地の北側にあたる山陰では、特に良質な砂鉄が採れ、木炭の材料になる樹木が豊富だったことから、明治に洋式製鋼が普及するまで、高殿を築いた山内と呼ばれる組織化された製鉄業が行われ、全国に供給していたそうです。
出雲国風土記にも鉄(はがね)有りと記された、現在の奥出雲はヤマタノオロチ神話も残る場所。
1977年には、日刀保たたらとして日本古来のたたら製鉄が復活しています。日本刀の原材料、玉鋼の基礎知識をしっかり頭に入れて前半は終了。

後半は、大庭先生のご専門、結晶学から日本刀を語っていただきました。
大庭先生は、日本刀を切断し、断面を走査型電子顕微鏡で分析し、刃先は硬く刃文ができている辺りには結晶の変化がみられ、マルテンサイトと呼ばれる結晶構造を生み出していることを解明されました。
これは、日本刀の折れない、曲がらない特性を刀匠の高い技術で作り出しているとおっしゃいます。

焼き入れの際に鉄と炭素の結晶構造の変化により、微細な体積の膨張が起こって日本刀独特のそりが生まれます。その結晶の電子顕微鏡写真は正に自然が作り出したアートでした。姿も美しいですが、構成している原子も美しい。
刀匠の高い技術がなければ造りだせない、現代の科学では生み出すことのできない日本刀の美しさ。日本人の美意識の結晶かもしれません。
  • 島根大学大学院総合理工学研究科 大庭卓也教授
    島根大学大学院総合理工学研究科 大庭卓也教授
  • 出雲神話からディープな結晶の世界まで語っていただきました
    出雲神話からディープな結晶の世界まで語っていただきました